はじめに 起業家の目でみる「薩摩の教え」
『薩摩の教え』というものをご存知ですか?
近年では、2018年(平成30年)のNHK大河ドラマ「西郷どん」で薩摩藩の教育について取り上げられていて、郷中(ごじゅう)という薩摩藩の武士階級子弟の教育方針がありますが、そのなかでも紹介されていました。
ビジネスセミナ―でも『薩摩の教え』を題材に使うこともありますので、とくに社会人男性には知っている人も多いと思います。
『薩摩の教え』とは、薩摩藩、現在の鹿児島県で伝わってきた「男の生き方としての心得」が基盤です。
当ブログでは、老若男女かかわらず、今から起業を考えている人、副業(複業)で新規にビジネスをやろうと思っている人へ「起業家」としての視点から考察します。
島津義弘公の教えともいわれる『薩摩の教え 男の順序』
実はこの教えを説いたのが実際は誰なのか、記載が残っているわけではないそうです。
言い伝えとしては、関ケ原の戦い(1600年)で西軍として敗れながらも、敵陣・徳川家康軍を正面突破して逃げのび「島津の退き口」としてその名を日本全国に轟かせた島津義弘の教えと言われています。
戦国時代の武将の生き様・戦い方は壮絶なものが多く、この武将だけではないですが、明日の命もわからぬ戦乱の時代に、領土領民、お家存続をかけて戦い抜くなかで残した有名武将の言葉だとすれば、現代を生きる私たちにとってあまりにも重みのある深い言葉に感じられます。
『薩摩の教え・男の順序』とは、男(人間)を評価すべき順序を示したもので、1番から5番までの5段階があるという教えです。
6番目の最下位のものもあるとも言われており、私は6段階のものを使用します。
また、「男の順序」となっていますが、もちろん現代では性別は関係ありませんし、年齢も関係ありません。老若男女すべての人として考えます。
薩摩の教え 男の順序
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- 何かに挑戦し、成功した者
- 何かに挑戦し、失敗した者
- 自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手伝いをした者
- 何もしなかった者
- 何もせず、批判だけしている者
- 何もせずに批判するだけではなく、足を引っ張る者
起業家としての「男の順序」とは
何かに挑戦し、成功した者
あらたに何かを始めること、起業であれ副業(サイドビジネス)であれ、またはビジネスをしていながら新たに別のビジネスをすること(複業)も同様で、自分から何か事を起こすということは、本当に大変なことです。
とくに、今まで会社員だった人が退職し、独立して起業する、などといったように、自分の今までの経験の中でしたことがなかったことへの挑戦は、未経験かつ仲間がいない孤独という2つの大きな壁への恐怖を乗り越えなければいけません。
誰かに相談しても、結局のところ他人は他人ですし、身内なら、逆に心配をかけたくない思いもあり、家族は家族で心配のあまり安定を望むでしょうから、孤独感は誰にも理解してもらえません。
起業セミナーに参加しても、起業までのノウハウは教えてくれるかもしれませんが、自分のスキル・経済状態・やりたい方向・心情まですべて理解してもらえるわけではないので、不安が取り除かれるわけではありません。
私も起業前にこのような起業セミナーや講習にいくつも参加しましたので、自分の経験からよくわかりますが、参加している周囲の人が皆、自分より立派に見えてしまうのです。
ですから、この不安と孤独感を乗り越えて、今、起業しようとしている(起業した)こと自体で、私はこの「薩摩の教え」の「男の順序」として1番に書かれているように、いちばん評価されてよいと思います。
起業(新事業)をしようと考えたけれどやっぱりやめた、という人が、この世にどれだけいることでしょう?
資金がない、家族や友人に反対された、今はそのタイミングじゃないから・・・などと理由をつけて、結局なにも行動しない人のほうが圧倒的に多いのです。
何かに挑戦した、それだけで素晴らしい。評価される人です。
起業した、副業を始めた、実際にことを起こしたのであれば、それは最初の1歩は「成功した」といえます。
起業したこと、つまり行動して結果を出した、と捉えて良いのですから。
何かに挑戦し、失敗した者
成功者と言われるビジネスエリートや企業家、有名人のほぼすべての人が、言い方は違えど必ず言うことがあります。
それは、全戦全勝ではなかったということです。
中には、1勝9敗くらいだという経営者さえいます。
何年間も無敗の圧倒的王者のアスリートでさえ一度も負けたことがないなんてことはないですが、さらにビジネスの世界では、勝率はもっと低いものです。
新商品や新サービスを出しても、うまくいく確率は半分以下、10回のうち数回うまくいけば名経営者だと言われます。
常にリスクヘッジを考えておく、リスク耐性の判断を間違えないといったことで、失敗を再起不能な大失敗にしないのです。
起業したばかりの人にとっては、自分のリスク許容度を理解しながら挑戦することが最重要です。
それでも、私が声を大にして言いたいことは「挑戦し、失敗しても、また挑戦すればよい」ということです。
ビジネスに限らず人生のなかで、失敗や挫折なんて大小ふくめて何度もあります。
だから失敗したなんてことは、時が過ぎ乗り越えてしまってから見れば小さいことです。
長く生き抜いてきて振り返って、その失敗が武勇伝になって楽しく思い返して自慢話にしているご年配の方もおられます。
失敗と思うような経験こそ、後から思うと忘れがたい経験、自分のドラマの重要な一コマになります。
失敗したら、そのことを反省することはあってもクヨクヨ思い悩まず、また立ち上がればよいのです。
起業家にとって、失敗なんて日常茶飯事くらい良くあることと認識し、リスク許容度の範囲内の失敗を何度も経験していると、失敗が失敗でなくなり、怖くもなくなります。
その改善能力とタフさと挑戦心の強さが、成功をよんできてくれます。
たまたま、今その失敗のなかにいるという場合があったとしても、挑戦した者は、尊敬される人なのです。
自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手伝いをした者
あなたが起業した人であれば、私が考えるには「男の順序」の1番(何かに挑戦し、成功した者)と2番(何かに挑戦し、失敗した者)に該当しますので、ほかはないと思います。
また、あなたの友人や家族が起業するなどの挑戦をしている場合、この3番目(自ら挑戦しなかったが、挑戦した人の手伝いをした者)について、周りの人を想像してみてください。
なにかに挑戦しようとするとき、アドバイスをくれたり協力してくれたり、応援してくれる人たちがいてくれることはとてもありがたいです。
実際に行動してくれる人には、本当に感謝の念しかありません。
起業したばかりの人は不安と孤独の中にいますから、何らかの手伝いをしてくれる人がひとりでもいてくれるのは、心強いものです。
あなたは挑戦する人を応援したり助けてあげたりしていますか?
それは、金銭的援助やビジネスを手伝うということだけではありません。
配偶者や身内でないのであれば、そこまで入り込むことはかえってトラブルになります。
そうではなく、自分にできる知人の紹介とか、励ましの言葉、応援する気持ち、悩みを聞いてあげる、そんなことでも良いのです。
「こんなアプリがあるから起業に便利だよ」でもいいですし、「そういえば、〇〇さんがそのビジネスに詳しい知人を知ってると言ってたから紹介してあげるよ」でもいいんです。
下心ではなくて、本当に、これはいいかもしれないと思う何かがあれば、教えてあげたりする。
そういう世話焼きのようなことが、ビジネスにつながっていくことがあります。
もし、あなたの友人やご家族が起業したところであれば、励ましやちょっとした紹介などで助けてあげてください。
挑戦した人を手伝ったり助けたりする人は、とても評価されるべき人間で、それがめぐりめぐって、今度自分がなにかをする側になったときに、助けてもらえるのです。
何もしなかった者
ここではビジネスマンの視点で、何もしなかった者についてです。
たとえば起業家でも個人事業主でも会社員であった場合でも、「何もしなかった者」とは、会社に出社して何もしないということではなく(そんな会社員がいたら解雇ですが)なにか新しいことに挑戦しない、新しい業務に取り組むことを避け、日々同じ仕事を繰り返しているだけ、という人を指したいと思います。
マンネリで同じ仕事をし続け、改善しようとか新しいことを試みようという気概がなく、言われたことを言われたようにやっているだけという人のことです。
それでも他人の挑戦を手伝ったり協力したりするなら3番目に該当しますが、それさえしない人なら、4番目(何もしなった者)です。
淡々と仕事は仕事と割り切っている人にこのような人が多いです。
いろいろな事情で、たまたま心がそのような状態になってしまう時があります。
長い社会人人生のなかでは、ほかの悩みなどを抱えていてギリギリ仕事をするだけで精一杯、という時があるのも理解します。
しかしそうでなく、ただマンネリで関心も薄れた仕事を給料のためだけにやっているのであれば、一度考えなおす時間を持ってほしいです。
人生は一度きり。
何も挑戦しない人生が、コスパの良い人生で、それでよかったのでしょうか?
何もせず、批判だけしている者
5番目の「何もせず、批判だけしている者」って、実はけっこう多いのです。
会社や所属する団体(サークルであれ趣味のグループであれ地域の集まりであれ)では、1人企業でない限り、何かを誰かと共同で行います。
なんらかの集団で事を成すときに、必ずと言っていいくらいその中に一人はいます。
とにかく批評・批判ばかりする人。
私の経験上、暇な部署、間接的部署にいる管理職に多いです。
新しい挑戦をする人、第一線で営業・企画・開発などを行う人を、後ろから、ああだこうだと評論家のように批評するのです。
リスクを取って挑戦する人や第一線で先頭に立って忙しく働く人は、前向きに行動し忙しいので、他人の動きにいちいち批評なんかしている時間はありません。
ですが、暇な立場だからこそ(またはあえて自分は仕事せずに暇にしているから)たっぷり他人の動向を見る時間があり、批判することで自分の存在価値を示そうとしているのです。
挑戦した人がうまくいけばうまくいったでひがみねたみ、少しでも失敗したら、それ見たことかと嬉しそうに非難する。
そこまででなくても、常に自分は傍観者で、批評することが管理職の仕事だと大きな勘違いをしている痛い人。
昔の成功話を自慢しそれだけが誇りで、今は体力知力が持たなくなっているので動けずに、他人批判と部下批評だけを仕事にしている中年男。
女性でも、とにかく噂好きでねたみが多く、批評・悪口陰口ばかりでマウント合戦している人たち。
あなたが男性であれ女性であれ、何歳であっても、どうかそんな集団から離れてください。
人を批評して悦に入っているだけの人生がいかに虚しいか、歳をとってから知っても、時間は戻ってきません。
何もせず、批判するだけではなく、足を引っ張る者
最後に、もう最下位(6番目)に該当するのが『何もせず、批判するだけではなく、足を引っ張る者』ですが、語るまでもなく軽蔑されます。
5番目(何もせず、批判だけしている者)の状態の人でもたいがい軽蔑対象ですが、さらに、人の足まで引っ張るのですから。
怖いことに、5番の「何もせず、批判だけしている者」は、次第に足を引っ張る人になっていくのです。
批判したり悪く言ったりしているだけですでに足を引っ張っているとも言えますが、その「口撃」が攻撃行為になり、批判者は自分でも知らないうちに足を引っ張る行為をします。
こんな軽蔑される側には絶対にならないこと。
最後に 起業家の目でみる「薩摩の教え」
1から6までの「男の順序」を見てきました。
人間として最低でも3以上でありたいものです。
そして、起業家なら1になりたいものです。
まちがっても4~6番目の人間にならないために、大切な心構えは以下のことだと私は思います。
自分、そして自分の人生(時間)を大切にする
今の自分と自分の周囲に感謝する
今のままでもできる新しい何かをいつも考える
自分を絶対に卑下しない
自分に優しく、そして他人にも優しく
自分が嫌だと思うことは絶対に人にしないこと
ビジネスは、喜んでくれる人が多ければ多いほど成功するものだと言われます。
人に褒められる努力をするより、人を褒めることをたくさんする人のところに人は集まってきます。
私も『薩摩の教え』を人の品格の順と考え、起業家として「挑戦し続ける」ことがなにより大切だということを肝に銘じたいと思います。
前を向いて頑張っていきましょう!